
リンパ肉芽腫症
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)とは?
- 鼠径リンパ肉芽腫(Lymphogranuloma Venereum, LGV)は、性感染症(STI)の一種で、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)のL1〜L3型によって引き起こされます。
- 通常のクラミジア感染とは異なり、主にリンパ系に影響を及ぼすのが特徴です。
- 以前は熱帯地域や発展途上国で多く見られましたが、近年は欧米や日本でも増加傾向にあります。
- 特に、MSM(男性同性愛者)やHIV陽性者の間での発生率が高いと報告されています。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の原因
- クラミジア・トラコマチスのL1〜L3型が原因となる。
- 性的接触(膣性交・肛門性交・口腔性交)によって感染が広がる。
- 特に肛門性交による感染が多く報告されており、肛門や直腸に炎症を引き起こすことがある。
- 熱帯地域では異性愛者の間での感染が多かったが、現在の感染拡大はMSMの間での感染増加が要因となっている。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の症状
LGVは進行性の疾患であり、3つの段階に分けられます。
第1期(初期症状)
- 感染後3〜30日(通常1〜2週間)で症状が現れる。
- 性器や肛門に小さな無痛性の丘疹(できもの)、水疱、潰瘍ができる。
- 多くの患者はこの初期症状に気づかず、放置されることが多い。
第2期(進行期)
- 初期症状が消えた後、2〜6週間後に鼠径部や骨盤のリンパ節が腫れる。
- リンパ節の腫れは片側だけに現れることが多いが、両側に起こることもある。
- 腫れたリンパ節は硬くなり、痛みを伴い、膿を形成することもある。
- 発熱、寒気、倦怠感、関節痛などの全身症状を伴う場合もある。
- 肛門や直腸に感染した場合、排便時の痛み、膿の分泌、便秘、出血などが起こる。
第3期(慢性・後遺症)
- 治療せずに放置すると、リンパの流れが滞り、象皮病(リンパ浮腫)や肛門・直腸狭窄を引き起こす。
- 慢性的なリンパ節の腫れ、膿瘍、瘢痕形成(皮膚の硬化)が起こる。
- 直腸や肛門の炎症が続くと、狭窄(腸閉塞に似た状態)が発生し、手術が必要になることもある。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の診断方法
- 医師による問診(性行為歴・症状の確認)
- 鼠径リンパ節の腫れがある場合は視診や触診を行う。
- 性器・直腸・喉などの分泌物の検査(PCR検査・NAAT法)でクラミジアの遺伝子を検出。
- 血液検査でクラミジア抗体の有無を確認する。
- 直腸炎症がある場合、肛門鏡検査を実施することもある。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の治療法
- ドキシサイクリン(100mgを1日2回、3週間)が標準的な治療法。
- アジスロマイシン(1回1gまたは複数回投与)も有効とされる。
- 早期治療であれば、完全に治癒するが、進行した場合は後遺症が残ることもある。
- 性交渉相手も同時に治療を受ける必要がある(パートナー治療)。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の予防法
- コンドームの適切な使用(性行為時に必ず使用する)。
- 複数のパートナーとの性交を避ける。
- 定期的な性感染症(STI)検査を受ける。
- 早期発見・治療により、合併症を防ぐことが可能。
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)の日本における現状
- 日本ではLGVは極めてまれな感染症とされている。
- 近年、MSMの間で報告例が増加している。
- 海外で感染し、日本で発症するケースがほとんど。
- 日本国内での感染症対策の強化が求められている。
まとめ
鼠径リンパ肉芽腫(LGV)は、クラミジア・トラコマチスのL1〜L3型によって引き起こされる性感染症で、主に鼠径部のリンパ節が腫れるのが特徴です。初期症状が軽いため気づかれにくく、放置すると直腸炎やリンパ浮腫などの合併症を引き起こすことがあります。特にMSMの間での感染が増加しており、注意が必要です。感染の疑いがある場合や症状が気になる方は、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けてください。早期発見と抗生物質による治療で完治が可能です。性感染症のリスクを減らすためにも、コンドームの適切な使用や定期的な検査を心がけましょう。
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