
梅毒の初期症状の見分け方
「なんだか性器にしこりのようなものが…」「赤い発疹が手のひらや足に出てきた」──こんな症状に心当たりはありませんか?もしかすると、それは性感染症のひとつ「梅毒(ばいどく)」かもしれません。
かつては過去の病気と思われていた梅毒ですが、近年、日本国内で感染者が急増しています。特に20代〜30代の若い世代を中心に感染が広がっており、2023年には報告数が過去最多を記録しました。しかも、梅毒は初期症状が非常にわかりづらく、気づかないうちに他人へ感染させてしまうことも少なくありません。
この記事では、若年層で感染が拡大している背景や、見落としやすい初期症状、放置した場合のリスク、検査方法や治療の実態までをわかりやすく解説します。特に「最初にどんな症状が出るのか?」を中心に、今すぐ知っておきたいポイントを押さえていきます。
梅毒とはどんな病気?
- 性感染症のひとつで、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる
- 皮膚や粘膜を通じて感染し、放置すると全身にさまざまな症状を引き起こす
- 現在は20〜30代の若い世代で感染が急増中
梅毒は歴史的には「不治の病」とも呼ばれましたが、現代では抗生物質で完治可能な性感染症です。ただし、症状が分かりにくく、放置されやすいため、重症化するケースも少なくありません。特に若年層での感染者数は年々増加しています。
厚生労働省の2023年データによれば、日本国内の梅毒報告数は過去最多を更新しており、特に20〜24歳の女性が多くを占めています。これは、初期症状に気づきにくく、病院受診が遅れることが主な原因と考えられています。
若い世代で感染者が増加している理由
- 20〜30代の性交渉の多様化と感染対策の意識の低下
- マッチングアプリなど出会いの機会の増加
- 感染しても自覚症状がないままパートナーにうつしてしまうケースが多い
2022年の報告では、梅毒の新規感染者数は12,000件を超えました。感染者の約60%が20〜40代に集中しており、その中でも女性の感染増加が顕著です。妊娠中の感染で胎児に重い影響を与える「先天梅毒」も社会的な問題となっています。
梅毒の感染経路とは?
- 性行為(膣・肛門・口腔)を通じて感染
- 粘膜や皮膚の小さな傷口から菌が侵入
- 妊婦から胎児への母子感染もある
キスやオーラルセックスでも感染することがあり、コンドームでの完全な予防は難しいこともあります。特に梅毒は潰瘍(しこりやただれ)などの目立たない症状から始まるため、無自覚なまま感染を広げてしまうケースが後を絶ちません。
第1期梅毒(感染初期)の症状
- 性器・口・肛門などに痛みのないしこり「硬性下疳(こうせいげかん)」ができる
- 数週間後にリンパ節が腫れる「無痛性リンパ節腫脹」が起こる
- 症状は自然に消えるが、治癒したわけではない
初期の梅毒は感染から3週間前後で現れ、感染部位に1〜2cm程度の硬く盛り上がったしこりが見られます。多くの場合、痛みがないため放置されがちで、数週間で自然に消えることがありますが、菌は体内に残っており、次の段階に進行します。
第2期梅毒(全身症状)
- 感染から約3ヵ月後、バラ疹と呼ばれる赤い発疹が手足や体幹に出現
- 口腔や性器周囲に扁平コンジローマ(いぼ状の発疹)
- 虫食い状に髪が抜ける「梅毒性脱毛」
第2期では、梅毒トレポネーマが血流を通じて全身に広がるため、皮膚症状だけでなく全身倦怠感や発熱を伴うこともあります。特に「バラ疹」は特徴的で、手のひらや足の裏にも発疹が出るのがポイントです。
第3期〜第4期梅毒(進行した梅毒)
- 結節やゴム腫(ゴムのような腫瘍)が皮膚や骨にできる
- 大動脈瘤や心臓疾患を引き起こす「心血管梅毒」
- 脳神経障害を起こす「神経梅毒」もある
梅毒を長年放置すると、全身にさまざまな障害を引き起こします。中でも第4期に現れる神経梅毒は認知障害や麻痺、視力・聴力の低下など深刻な後遺症を残すこともあります。
妊娠中の梅毒と先天梅毒
- 胎児に感染すると先天梅毒になり、死産や奇形の原因となる
- 先天梅毒は出生後も視覚・聴覚障害や精神発達遅延を残すことがある
- 妊娠初期の検査と早期治療が重要
妊婦が感染していると、胎盤を通じて胎児にも梅毒トレポネーマが感染します。2023年には全国で先天梅毒の報告数が60件を超え、社会問題として報道されました。妊婦健診での早期発見と治療が極めて重要です。
梅毒の検査方法
- 血液検査(STS法、TPHA法)で診断可能
- 性感染症クリニックや婦人科、泌尿器科で実施
- 自宅でできる郵送検査キットも普及
梅毒は血液検査で簡単に診断できます。感染初期でも検出可能な検査法があり、匿名・自費での受診も可能です。パートナーと一緒に検査を受けるのが理想的です。
梅毒の治療方法
- ペニシリンなどの抗菌薬で治療(注射または内服)
- 軽症であれば数週間の投薬で完治
- 治療後も経過観察が必要(再発リスク)
治療は主にペニシリン系抗菌薬が用いられ、注射が基本ですが、アレルギーがある場合は別の抗菌薬で対応されます。治療後も血液検査で菌の消失を確認する必要があります。
予防のためにできること
- 不特定多数との性行為を避け、コンドームを正しく使う
- 定期的な性感染症検査を受ける
- パートナーとの感染状況を共有する
特に症状のない感染者が多いため、「自覚症状がない=感染していない」と考えるのは危険です。性感染症予防のためにも、関係性の有無に関わらず定期的な検査を行いましょう。
まとめ
- 梅毒は近年、特に20〜30代の若年層で増加中
- 感染初期は痛みのないしこり(硬性下疳)が特徴
- 放置すると全身に発疹が広がり、神経・心臓・胎児にも深刻な影響を与える
- 妊婦の感染は「先天梅毒」のリスクを伴うため注意が必要
- 血液検査で早期発見が可能。ペニシリンなどで完治できる
- 定期的な検査と正しい性行為で予防可能
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